孫崎享著「戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)」を読みました。
- 作者: 孫崎享
- 出版社/メーカー: 創元社
- 発売日: 2012/07/24
- メディア: 単行本
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昨年8月が初版1刷で、爺がもっているのは10月の初版第8刷です。歴史観は人それぞれで、孫崎さんのこの本が「正解」ともおもえないところがありました。それでも、外交という専門の分野から見た「首脳」たちの動きから、ある程度教えてもらえるという意味では、読むに値する本だと思います。
最近、尖閣列島のことが日中の火種になっています。日本側の報道では、1971年まで中国が尖閣を自国領と主張していなかったような表現になっています。で、この本で、そのあたりのことを見ると次のようになっていました。
(1971年)…(略)…その後もニクソン大統領の佐藤首相への報復は継続します。そのひとつが尖閣諸島に対する米国の態度です。…(略)…「ニクソン訪中のあと、尖閣諸島について国務省は日本の主張に対する支持を修正し、あいまいな態度をとるようになった。佐藤の推測によれば、ニクソンと毛沢東のあいだで何かが話し合われたことを示すものだった」…(略)…: 同書254ページ
あ~なるほど、中国がそれまで言っていなかったことに声を上げ始めたのには米国の了解があったのかと、わかります。米国にしてみれば、領土問題がクローズアップされることで沖縄における米軍基地の存在意義が上がるとの読みもあったのでしょう。佐藤首相が国益を守る、という側面があったのだと…。
また、自民党福田康夫首相(2007/9-2008/9)についてはこのように書いてあります。
福田康夫首相時代、米国はアフガン戦争への自衛隊ヘリコプターの派遣を強硬に要求しました。…(略)…辞任することによってこの要求を拒否したようです。:同書350ページ
「私にはわかるんです」というある意味開き直りにも聞こえた記者会見の言葉にはこういう意味があったのだろうと、今になってこういう本で教えられるということではなかろうかと。もちろん、福田政権が良かったということでもないのですが、自民党政権でありながら、守るべきところをもちつつ、辞職ということでしかかわしきれない対米追随の限界という両面を見た思いです。
ほかにも、いくつかの「死」をとりあげている点も関心をひかれます。もちろん、著者がそこを強調しているのでもなく、なにか別の力とかなにかがはたらいていた、と具体的には一切書いてないのですが、前後から読み取るのに、政治とは命がけのモノであると思えます。
対米追随が激しいのが昨今のようすです。日本がどのように国益を守っていくのか。そうかといって、戦前のように軍国主義や国粋主義になってもらっても困るわけです。世界や日本でおこることに米国がどう悪さをしているか、また、この結果、米国はどう利益を得るつもりなのかという、疑問を持っていると、不可解な事件も少しは見通しが良くなるのかもしれません。
一読をお勧めします。