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最高裁物語〈上〉(下) 山本祐司著

最高裁物語〈上〉秘密主義と謀略の時代 (講談社プラスアルファ文庫)

最高裁物語〈上〉秘密主義と謀略の時代 (講談社プラスアルファ文庫)


最高裁物語〈下〉激動と変革の時代 (講談社プラスアルファ文庫)

最高裁物語〈下〉激動と変革の時代 (講談社プラスアルファ文庫)


最高裁物語〈上〉秘密主義と謀略の時代、 同〈下〉激動と変革の時代(山本祐司著) は1997年4月に発行されています。最高裁を頂点とする日本の司法組織そのものと考え方を概観できる、と思える本です。友人が「読め」と渡してくれた上下をあわせた本は800ページを超え、たいそうな量でした。

全逓中郵事件、全農林警職法事件など、公務員のストや政治活動の関係する最高裁判決は、爺も若いころに判決文を含め勉強した思い出のある記述も目にとまりました。最高裁の人事権を握ることが、国の意思を静かに、そしてカウンターブローのように左右するパワーになるという視点で読むとわかりやすい本だと思いました。徐々にリベラル派が退官で少なくなり、保守派が多くなる…そして現在(1990年代後半)は「新リベラル」の時代なのだそうです。

刊行されすでに15年以上たっています。2013年の今、最高裁はどうなんでしょう。以下は、本を読んだ後の関連の感想です。

国会議員の身分にもかかわる定数訴訟で、国会の怠慢が厳しく指弾された判決が相次いでいます。これを民主主義の実現過程、と見るのに多くの方が同意されるだろうと思うのです。しかし、爺には、もう一つ、司法と現体制維持のための意思、と見えるのです。2冊の本を読んだ後、そのように思ったのです。

つまり、自民党体制を維持存続、または保守政治を持続するのに、正当な理由は無いか、というような視点です。産業が発展し工業生産に傾斜した日本にあって、農漁村の存在は相対的に低下させられています。現在の選挙制度は、地域性を考慮した議席配分となっているため、都市部有権者が相対的に「損」をしています。TPP問題のように、これまで地盤としてきた農漁村の議席は必ずしも具合よくないのです。それなら、有権者が訴訟までおこして法の下の平等を求める一票の価値に乗っかって、統治権力の基盤を都市部・産業界に移してしまった方が好都合ではないか、と思えてくるのではないでしょうか。小泉首相(当時)が「自民党を解体する」との旨の発言をしたのと重ねると、司法を含む権力の側の思惑が浮かんでくるようです。そして、都市労働者は雇用不安定で不満はあるが、それゆえチカラに弱い、支配に弱い、という性質がある、ゆえに、都市部・産業界を基盤として自民党の政治基盤を確保できる、と読んでいるのでしょう。

選挙制度のおかげで得た多数で、憲法を改悪されてはたまりません。定数訴訟の判決、最高裁までいくと、司法の側から、自民党に向けて、「もう、農漁村に依存する時代じゃないでしょう」「都市部・産業界を基盤にした支配が有効だ」「それに合致した選挙制度につくりかえなさい」と暗に言うような判決になるのではと見えます。日本の民主主義の進路が問われる時代です。一票の格差是正が淀みなく実現されなくてはなりません。名をかりて、悪乗りした新たな不公平を作らないでもらいたいと…。最高裁はあてにできないし…。